第五章 弐

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 いつの間に夏樹は彼女の名前を聞きだしたのかは分らないが、二人の間に何らかの関係が生まれ始めているのを佐々木も倉橋も勘付いた。  いくら小柄だとはいえ、高校生の男の子の力は強い。  大きく暴れる上に、ベッドのスプリングでその力の反動が倍増する倉橋を押さえ付けているのにも限界が見え始めていた。  一瞬、愛ちゃんと呼ばれる少女へ視線をやったその一瞬の隙をついて、倉橋は思いっ切り夏樹の頭にヘディングを決めた。 「きゃぁっ」  激しい痛みに頭を抱える彼女を押しのけ、倉橋はベッドから飛び降りると、小川の口に手を突っ込み、下顎を外そうと今にも力を込めようとする愛ちゃんの真正面に立った。
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