第六章 弐

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 佐々木としては、自分がついていながら、飯田や佐々木、倉橋といった一般市民を巻き込んだだけでなく、犯人を取り逃がした。  挙句の果てには、部下達を失うような結果となり、その責任を取って、降格処分を言い渡されると同時に、この一件から手を引かされると思っていただけに、警視長の命令に対し、思わず口元を緩めそうになるのを、ぐっと堪える。  よくよく考えてみれば、普通の連続殺人事件では無いというのは、既に、上層部も知るところ。  犯人を取り逃がすもなにも、犯人を捕まえる事など出来ない訳だし、部下を守ろうにも、守る手立てが無かったのだから、仕方がないのだ。  その辺の事情を加味しての判断だと受け止めた佐々木は、腫物でも触れるかのように、恐る恐る遠目で観察されているであろう夏樹の押送を快く受けた。
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