第六章 弐

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 理由は簡単である。  このまま、彼女がこの場で軟禁されたり、自分以外の人間の手によって、刑務所の中の特殊な独房に入れられでもしたら、二度と会う事も、連れ出す事も出来きない。  冤罪だと分かっていながら、逃がす事すら出来ないどころか、呪いを断ち切る手立てが無くなってしまう。  だが、自分が彼女を押送する役割を担えば、途中で飯田と一之瀬を合流し、彼女の元に必ず戻ってくる愛子の霊を何とかする事が出来る可能性が出て来る。 「願ったり叶ったりだ」  口を動かさず、口内だけで佐々木は呟くと、口元を引き締め、長官の目をしっかりと見た。 「私が押送致します」  覚悟を決めたように、重々しい声を発すれば、「頼んだよ」と、満足気な表情を見せる長官。
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