第六章 弐

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 一之瀬は、佐々木の気持ちを汲み、彼の悔しさに触れぬよう、「よく、お堅いエリートさん達が、霊能者なんていうものを信じて、許可をくれましたね」と、彼には珍しく、悪戯っぽく尋ねた。 「まぁ、世間に発表は出来なくても、あれだけ多くの証言とカメラの映像を見れば、流石に、霊の存在を信じざるを得ないだろう。初めは、一般人が決して入る事の出来ない保護施設に、倉橋君を無断で連れ込んだ事に大層ご立腹だったけれど。あのカメラの映像のお陰で、私の意見も行動も納得して貰えたし、今回の事も、すんなりと許可を頂けたよ」  その時の事を思い出しているのか、それとも小馬鹿にしているのか、佐々木は小さく笑いながら、「流石に、いくら鍛錬を積んだ特殊部隊であっても、幽霊相手じゃ、どうにも出来ないというのは、お偉いさん達にも理解出来ているようだよ」と、呟いた。
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