第六章 弐

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「ふむ。で、佐々木さんがわざわざ、秘密裡に進めなくてはならない夏樹の押送を、組織を裏切ってまで僕に連絡してきたって事は、勿論、あの馬鹿を掻っ攫えっていう意味ですよね?」  現状を把握させる為、保護施設で起こった出来事から今までの経緯を話し終わったところで、一之瀬は佐々木が連絡してきた内容の核心を突いた。  長官直々の極秘命令を、他言するだけでも警察組織を裏切る行為であり、更には、『犯罪者』と断定された人間の逃走に手を貸すなど、懲戒免職だけでは済まされない。  だが、今回の事件に本当の意味での終止符を打てるのならば、佐々木は、大罪を犯す覚悟も出来ていた。  それは何故かと言えば、亡き同僚の弔いでもあり、刑事として、これ以上犠牲者を増やしたくないという意地でもあった。
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