第六章 参

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 身体はここにあっても、彼女の心も意識を本当にここには無いのだと理解すれば、座ったばかりだというのに、おもむろに席を立つと、夏樹の傍まで近付く。  手に持っている冷たくズッシリとした重みのある輪っかを、彼女の両手首に装着する。  白く、傷一つない華奢な腕に不釣り合いなゴツイ腕輪が、銀色の鈍い光を放つと、何とも言えない罪悪感のようなものが、佐々木を襲う。 「こんな事はしたくなかったのですが……。でも、大丈夫です。貴女は私達が救いますから」  眉を八の字にして小さく呟くと、ギュッと瞼を閉じ、顔の中央にパーツが全て寄るよう、顔面に力を入れると、気合いを入れ直した。
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