第六章 参

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 佐々木がこの部屋に入って来てからも、一切その姿勢を崩す事のない彼女を立ち上がらせるのは、至難の業かと思っていたが、両手でほっそりした彼女の両肩を支えれば、すんなりと立ち上がらせる事に成功した。 「武ノ内っ! 倉橋君!」  廊下に聞こえる大きな声を張り上げ、彼らを呼ぶ。 「はいっ」 「ようやく出発ぅ~?」  大股で規律正しく部屋の中へ足を踏み入れる武ノ内の後ろから、怠そうな口調とは裏腹に、ピリリとした緊張感と殺気を漂わせている倉橋がのんびりと顔を出す。
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