第六章 参

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 尊敬する先輩であり上司でもある佐々木に対し、チャラチャラした痔格好の高校生が、横柄な態度をとるのが気に食わないらしく、肩ごしに睨みをきかせるも、全く意に介さず飄々と入って来た。  文句の一つでも言ってやりたいところを、グッと我慢し、武ノ内は佐々木に向き合い、敬礼をする。 「そんな肩っ苦しい挨拶はいい。既に聞いているとは思うが、これから府刑へ向かう」  あえて理由は語らず、簡潔に述べると、「はっ!」と短く返事をし、佐々木に替わり夏樹を支える。 「府刑って、府中刑務所? まぁた、オッソロシー所に連れて行くんっすね」  射抜くような眼差しを佐々木に向ける倉橋は、茶化すような言い方の中に、幾分か棘を含ませる。
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