第六章 参

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 しかも、ここには、一体何を考え、何を狙っているのか分らない夏樹もいる。  どうしたものかと思案しつつも、佐々木は決して倉橋の目から自分の目を逸らさずにいた。 「そうだね。私も組織に属する人間だ。上が決めたことに“一応”は、従わなくてはならない。ただ、“何が起きるか分らない”からこそ、私だけでなく、武ノ内や、倉橋君にも手伝って貰うんですよ」 「……っ!」  倉橋の瞳孔が僅かに開く。  察しのいい男で良かったと、佐々木は小さく安堵する。  多分ではあるが、佐々木の言葉に突っかかることなく無言でいた倉橋は、その目の動き、表情からも、言葉の裏をきちんと読み取ったようだ。
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