第二章 弐

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 だが、当の本人は、見えない何かから死にもの狂いで逃げているようで、血走った目をし、周りの人間なんて一切視界に入っていない様子。  苦しそうに息を切らし、額には汗をびっしりとかいているところを見ると、相当な距離を走り続けていた事が即座に分かる。  ゼェハァと荒い息をしながら、視界が霞んでこれば、走っている本人も、これ以上は限界だと感じたと同時にアスファルトのへこみに爪先を引っ掛け、大きく体を傾けた。  ガッシャーンと、歩道の隅に置いてあった自転車に体当たりしながら、地べたに倒れ込んだ。
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