第二章 弐

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 落ちて来た看板が、まるで斬首台の刃物のように男の腕を切り落とし、その腕を潰すように被さり倒れていた。 「きゅ、救急車っ!」 「大丈夫ですかっ?」  痛みと苦しさに、狂ったように転げまわりながら吠え続ける男は、腕から大量の血液を流し、彼の周辺を真っ赤に染め上げた。  一見すれば、繁華街で起きた不幸な事故。  しかし、彼は意識を失う寸前、自分にだけしか聞こえない声を耳にしていた。 「あーあ。おにいちゃんは、もうダメだね」  それが、彼がこの世で最後に聞いた言葉であった。       
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