第二章 参

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「本当に一人で住むのか?」  静かでありながら、「そこに住むのは危険だ」という脅しを含んだように、威圧的に問いかけるのは、飯田 圭吾(いいだ けいご)。  彼こそが彼女の直属の上司であり、業界有名人でもある、あの『飯田課長』である。  彼はつい今しがた、夏樹が「例のアパートに住み込みで調査に入ります」と報告してきた事に対し、不機嫌そうに鼻を鳴らした。  自分のデスクの前で直立不動のまま自分を見下ろす彼女の、決意に満ちた表情の奥底に潜む内情を探るように、椅子にふんぞり返った姿勢のまま、獰猛な鷹を思わせるような鋭い眼で下から睨みつけるような視線を投げかける。
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