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そして、野生の勘とでもいうのか。
今まで、相手の正体を知らずに逃げた事など無いのだが、何とも言いようのない嫌な予感と、言い知れぬ恐怖が自分を襲い、あの場から一刻も離れなくてはという一心で、一歩も足を踏み入れる事なく走り去ったのだ。
そして、その後も続いている住人達の怪死を見れば、自分の判断は間違っていなかったのだと確信していた。
「正体の解からないもの程、怖いものはねぇ……」
実社会でもそうだが、理由なき犯行程、予測も抑止も不可能で厄介なものなのだ。
飯田は、一番不安な立場である彼女の事を思い、余裕のある態度で冗談めかした事を言ってはいたが、彼女の手助けをするにあたり、自分の命も投げ出す覚悟で腹を括ったのだった。
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