あと語り

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 ロムルス・オリオーネについて  この作品のラスボス、颯にとってもラスボス、峠の走り屋全てにとってもラスボス。  まず自分は作品を考える時に「物語の最初と終わり」を決めます。  今作は「一番最初に登場させるキャラクターをラスボスにしよう」と、颯でも憐華でも無いロムルスが作中で最初のセリフを発して、最初に登場したキャラになりました。  最初に出てきたキャラが実は最後の敵だった、ゲームとかで良くある手法を投じてみたのです。にしてもまさかロムルスが最重要人物だと気が付いた読者は居ないと思いますが。  名前の由来は「王」を意味するロムルスから、そして「オリオーネ」とはオリオン座からです。  彼は初代ラスボスである一星おじさんを意識している点があり、名前も一星おじさんがシリウス座だから、今作はオリオン座にしようと単純な思考から命名されました。    ラリーカーに搭乗しているのも共通点ですね、だけど性格は真逆だしそもそも走り屋ですらないという...  一星おじさんは青いオーラを纏っていたけど、ロムルスには何もありません、色自体を持たないのがロムルスなんです。  自分の作品てどんなに悪かったり性格がひん曲がっているキャラでも、何とか分かり合えるキャラが多いんです。  しかしロムルスと他数人は「絶対に、どんな事があっても分かり合えない、正真正銘の悪役」として生み出しました。  私の作品の世界は基本的に優しいのですが、100人居たら100人全員と仲良しに出来るかといえば、そうではありません。どうしても無理な相手って現実にだっているじゃないですか?    まぁロムルスや輪廻転生は走り屋ですらないので、向こう側が分かり合う心を持ってないというだけなんですけどね。  最終作なのに走り屋じゃない奴をラスボスにしていいものなのか?   過去作が(当たり前だけど)全員ラスボスは走り屋でしたので、特に迷いませんでした。  話の通じないモンスターとしての役割は、走り屋じゃない方がいいんです。これが走り屋だとすれば少しでも「何とかなるんじゃ?」って思っちゃうじゃないですか、何ともならない、倒すしか方法が無いようにしたかったんです。  そんなモンスターでありながら天災、圧倒的上位種として描いたロムルス含めた輪廻転生には、出番は少ないし登場も最後の最後になったけど大暴れして貰いました。  輪廻転生が登場してロムルスに勝つまではずっ~~~と重苦しくて陰鬱な空気が続いているんです。本当に走り屋の世界を絶望に叩き込みたかったので一切の笑いが生まれないように描いてました。  ロムルスに勝ってから初めて生まれた笑いが、エーリッヒからというのも皮肉を込めてます。  作中でも触れましたが彼は血は繋がってませんが、颯の兄として生きていた時があります。  颯よりも一回りは年上なのですが、外見は颯よりも若く見えております。    その理由は自分自身に人体実験を施して、若い身体を保っていたんですよね。この辺は走りとは特に関係が無いので作中ではサラッと流しましたけど、彼は色々と禁忌を犯してます。  デルタに触れてからこうなってしまったのか?  それとも最初からイカれてしまっていたのか?    それは私にも分かりません。  ただ彼には同情という感情を抱く事は不要です、圧倒的なまでに悪で敵なので。  散々「色」を主張している今作で、最後に戦うのが色を持たない侵略者というシナリオは、作品のテーマに真っ向から対立していて凄く気に入ってます。  チームを作っている走り屋って自分の頭の中では、ステッカーの見た目を決めているんですけど輪廻転生はもちろん、ステッカーはありません。ていうかチームじゃないので...  徹底的に悪役を貫いてくれるキャラって好きなんですよ、変に「悲しい過去が...」とか無くて私利私欲で動いていて、ブチのめして気持ちよくなれるキャラが自分は好きです。  ライターで颯達の写真を燃やしといて、最後には自分の身体も燃えるって因果応報ですね。  最後に彼の目的なのですが、デルタをあらゆるフィールドで勝利させ「真の帝王」にさせる事でした。  結果から見れば最も矮小だと思っていた走り屋の世界で、彼の目的は跡形もなく燃えてしまった訳です。仮に颯が負けて走り屋の世界が支配されてしまっていたら、アンダーグラウンドもモータースポーツ界も、世界中が大混乱に陥ってました。  それらを止めた意味でも颯達は「英雄」なのです。  デルタって実は個人的にかなり思い入れがあって、子供の頃にとあるゲームで操作して初めて上手く走れたのがデルタだったんです。    まさか走り屋の小説を書いて、この車をラスボスにする機会が訪れるとは...人生って分かりませんね。    
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