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20歳。 もう世間ではどんな責任だって覚悟しなければならない歳。 人に成る年齢だ。 夢があった。 それに向かって走ることはボクにとって、これから《生きていく》ってことだった。 この大都会の荒波にもまれて、はばたいてやる。見てろ東京。そう心に誓ってこの地を踏みしめた。 これが都会。 なんだか地面が柔らかい気がした。 この狭い土地の中を何万人が1日で行き交うこの道が人の重さと温もりで慣らされているみたいだった。 数々の猛者が集うこの場所で、この喉から思いをぶつけるために来た。 マイクを片手に、メロディーを味方につけ、人を魅了する歌を歌うために。 歌に対して自信はなかった。ここで自信をつけてやるんだという自信はあったが。 ある意味自信があったのかもしれない。 上京するということに一抹の不安がなかったわけではない。 行動することで、前に進めてる気になってただけだ。 その考えは、今思うと稚拙だったのかもしれない。でもその時は1番の原動力だった。
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