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「……別に虚しくなんかないよ。お互い持ちつ持たれつだし、結婚してる人とは付き合わないもの。何も問題ないでしょ?ちなみに、あの部長はバツイチだから」
私って、ホント嫌な女。男と簡単に寝るくせに、不倫はしないなんて綺麗事言ってる。結局、完全な悪女になり切れない中途半端な女なんだ。
「ったく……何言っても無駄みたいね。せいぜい遊ばれない様に気を付けなさい。じゃあ私、そろそろ帰るわ。彼が来るって言ってたから」
「……そう」
「うん、彼ってね、乾燥機はダメなのよ。お日様に干したフカフカのお布団が好きなの。だから今から帰って干さなきゃ」
そう言って空を見上げる佑月に、一瞬、そうだったねと言いそうになり言葉を呑み込む。そして「あらあら、お熱い事で……」とワザと大袈裟に茶化していた。
今日は、この時期には珍しい貴重な晴天。そろそろ鬱陶しい梅雨の季節も終わりだ。そう言えば、佑月の彼に振られたのも梅雨の季節だった……
そんな事など知る由もない佑月が満面の笑みを浮かべる。
「まぁね~そろそろ結婚式の招待状出さないといけないし。相談しなきゃいけない事もあるから」
幸せそうな佑月。親友としてはこんな嬉しい事はない。けど、女としては……微妙だ。
佑月をカフェの出口で見送り、私は飲みかけのシナモンティーを持ってカウンターに腰を下ろした。
「梢恵ちゃん、今日も混んでて悪いね。落ち着かないだろ?」
カウンターの向こうから声を掛けてきたのは、このカフェのオーナー白石(しらいし)さんだ。
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