薄れゆく、本への意識。

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薄れゆく、本への意識。

本を読む人が少なくなったなぁ、と思う。文字を書く事だけじゃなく、文字を読む機会すら今の時代は減ってきているのが、私はひどく哀しい。 そんな人たちに、少しでも本を読むきっかけになるものを作れたら、そんな思いもあって私は物書きをしている。 この、エブリスタというサイトで私が投稿している作品は、そんな思いで書いているから、取っ付きやすくて、読み切れる程度の短編が多い。 “取っ付きやすい” これはすごく大事なことで、目の前に本があっても、読み始めなければそれはただの紙の束。どれだけいいことが書いてあろうと、目を通してもらえなければ何の意味もなくなってしまう。 良い言葉、生活の知恵、感動、歴史。 世の中には、たくさんの素敵なものを多くの人に伝えるための表現が溢れている。映画・テレビ・漫画・音楽・絵…その中で、小説が淘汰(とうた)されてしまうのは、すごく切ない。 文字だからこそ、心に残るものだってある。 音だから、ほうっておいても耳に残ったり、じっとしていれば勝手に進んでいく映像であったり。それは簡単なことだけど、便利になった時代だからこそ、古き良き伝統であったり、文化であったりを大切にしたいと思う。大切にしてほしいと思う。 本当なら、私は電子書籍もあまり普及してほしくない。紙の媒体で本を出す人に、私はずっと憧れていたから。私の本を、誰かが手元に置きたいと思ってくれたら、それが一番、作家として幸せなことだと思う。 電子書籍は、かさ張らないし、いつでも読める。その利点はごもっともで、私もやはりそのお陰で出逢えた作品はいくつもある。そして、私の作品が人の目に触れる機会を少しでも増やせたらと思って活用させていただいている事実は否めない。けれど、これをきっかけに、紙の媒体の本に興味を示してもらえたらと、思わずにはいられない。 私は、沢山のことを本から学んだ。日本語がいかに素敵な表現で溢れているか。口語と文語では、変わってしまう表現がいくつもあって、それに一喜一憂してきた。知らない言葉をたくさん知って、その意味を理解して、素敵だと思ってきた。 そういうものを、たくさんの人に知って欲しい。感じて欲しいから。 だから、私は、ここで小説を書いている。
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