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自分の方が熱があったくせに。
此処にも一人、龍一より泉さんよりも。
私の屈折した性格を上手に分かっている人がいた。
カラカラに乾いて、艶やかな夜をほのかに欲す私を、遊馬さんはきっととっくに見抜いている。
「お、お友達はすっげ美人さんだ」
「こんちはー。美琴、めっちゃアンタのタイプそうな人じゃん。誰?」
「え、あ、泉さんの弟…」
その言葉に、千夏が遊馬さんを振り返り爆笑した。
「全っ然似てねーー!」
「…そこまで清々しく言われると、逆にちょっと気持ちいいね」
「何を言ってるんだか」
そう言いつつも、千夏と一緒に駅に入り、改札口で別れてしまった直後――。
家に帰りたくないと、私の全身が言っているのに気づいた。
「どうした?」
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