169人が本棚に入れています
本棚に追加
/104ページ
「一つ、聞いていい?」
深いため息を吐いた後、遊馬さんは言った。
「アンタが欲しいのは、何?」
何?
その言葉に、胸が痛くなった。
「兄貴が欲しいの? 兄貴っていう環境が欲しいの?」
「ち、がう。それが欲しいわけじゃない」
「アンタが欲しいモノって、アンタを見てくれる人なんじゃね?」
その言葉にぎゅっと目を閉じた。
「兄貴は、あんな風に静かに壊れていかなくちゃ自分を守れなくて、――周りも一緒に壊れて行くのを気付いてないし、気付いても近づいてきたアンタが悪いって思ってる。兄貴からは距離を取る気もないし、――これ以上は近づいてもくれないよ」
「……」
「それでも欲しいなら、ぶつかればいい。今の関係壊してでも」
泉さんとの今の関係を壊して、ちゃんと恋愛する。
それは、私が望んでいることではない。
私は恋愛から逃げる対象に――泉さんを選んだんだから。
最初のコメントを投稿しよう!