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「えー、面白いって酷いな」
困惑しながらも笑おうとしている姿が、なんだか一生懸命自分を隠してて、可愛いなんて思ってしまった。
「だってお局の望月女史が必ず新入社員に言うんですよ。『賢木部長は恋人を亡くされてから特定の人を作らないの』って。なんだか私たちも腫れものに扱わなきゃいけないみたいに言ってくるんです」
「はは。彼女は優しいからね。会社にも母親が居るみたいだ」
差しだした珈琲を飲みながら、優雅に香りを嗅ぐその仕草は、泉部長の育ちの良さが伺えた。
「恋人を引きずっている男って、重たすぎるかな」
「かなり。どうせ二番目か、彼女の代わりかなって思っちゃいますね」
そう言いつつ、正面のディスクに腰をかけると、誘うように首を傾げた。
「でも、――他に浮気もしないし自由になんでもさせてくれそう」
「寂しいとか思わないの?」
「珈琲の香りぐらい仄かでいい。それぐらいの愛情でも愛情を持ってくれるなら、それでいい」
言葉での駆け引き。
それに泉部長は乗っているのか乗っていないのか分からない態度。
失敗だったかな。
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