プロローグ

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鞄を持った部長は、やっぱり社交辞令の様な完璧な笑顔を貼りつけていた。 「じゃあ今日は帰る場所ないんじゃないの?」 「駅のロッカーに荷物が置いてますよ。友人の家にでも――」 「うち、弟が出ていったから部屋が開いてるよ」 ――え。 それは、部長の方から私の余裕ある笑顔を剥がしにきた。 「ただでは泊めませんけど、どうしますか」 「あ、――行きます。行きます! やっりー!」 なんだか自分の駆け引きの勝負に勝てた気がして飛び跳ねてしまった。 もっと大人の駆け引きを楽しもうと思っていたのに。 「君の日頃の勤務態度が良かったから、泊めてあげるだけです」 「でもタダでは泊めないんですよね」 ウキウキと私も鞄にいろいろ詰め込むとタイムカードを切った。
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