プロローグ

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夜の街を一緒に並んで帰った。 部下の失敗に注意することはあっても感情を曝け出して怒ることもしなければ、最低限の付き合い以外自分を見せない人。 けれど隣を歩くその上司の顔は、すれ違うどの男の人より格好いいし、なんだか隣に居て嬉しくなっちゃう。 「泉部長って最近嬉しいとか楽しいとか思ったことあります?」 「……変な質問だね。嬉しいねえ、あったかなー」 「なさそう。自分にも興味なさそうですよね」 「……」 何を思ったか少しだけ下を向いて考え込んだ泉部長は歩くのをやめた。 「部長?」 「じゃあ、楽しませてよ」 寂しげに笑うと私の腕を引き寄せた。 「楽しませて。退屈なんだ」 人がいるのを気にもせず、誰に見られても構わないと、 部長は少し屈んで私の唇を奪った。 「君が俺に望む関係になってあげるから、俺を楽しませて」
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