プロローグ

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今、私がここで手を離したら、夜の海に消えてしまいそうな。 浚われて抜けだせないような気がした。 この人ってきっと自分が弱いことを知っていて、諦めてる。 この世の人ではないみたい。 そんなに昔の恋人のことがショックで立ち直れないでいるのだろうか。 「はっきりいって、人生無駄にしてますよ。部長なら私じゃなくてももっと綺麗で性格が良い人に頼んでもきっと叶えてくれます」 「でも言ってきたのは君だけだった。君だったらきっと退屈はしないんじゃないかな」 此処で――手を離したら傷つけてしまうような気がした。 結局私はいつも、男を外見で選んでから中身に気付く。 その時には抜けだせないほど好きになって。 この人を一人にしたら駄目なんじゃないかなって。 私も背伸びしてキスすると、そのまま首に抱きついた。
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