書店にて

2/10
4人が本棚に入れています
本棚に追加
/10ページ
「いらっしゃいませ」 とある書店、入り口から奥まで細長い作りで、端から端まで約5列の書架が並び、入り口右手に階段があり、2階は漫画と児童書が申し訳程度に並んでいる。 しかしここいらでは一番規模の大きい書店であるため、地元民はこぞってここを利用する。 在庫は少ないが、近くに大手出版メーカーがあり、無い本は容易に取り寄せる事が出来るというのも利点の1つらしい。 バイトの俺にしてみたら、取り寄せという作業は失敗したらお客さんにも店にも申し訳ない事になる非常に面倒でプレッシャーのある仕事であるため、できるだけしないでいただきたいのが本音だがな。 「いらっしゃいませ、ブックカバーをおかけいたしましょうか?」 文庫本を2冊お買い上げになるお客さんにそう声をかけつつレジをうつ。 「あっ……うーん、と、じゃあお願いします……」 「はい、かしこまりました」 うおおお!唸れ俺の両手ぇええ! ブックカバーって各店によるけど、ここはしっかりと上下折り込むタイプのカバーを無料でかけさせていただくスタイルだ。つまり面倒且つコツがいる作業で、スピード命。慣れるのに相当時間かかった……。 しかし薄緑と薄茶色の混じった様な、落ち着いた色合いに店のロゴが表紙右上に来るそのカバーは、結構人気というか、評判は良い様だ。大抵カバーの有無を訊ねればかけて欲しいと言われるし、わざわざ買った冊数以上のカバーをお求めになるお客さんもいるくらいだしな(勿論無料でお渡ししている)。 「……お待たせいたしました。またのお越しをお待ちしております」 「あっ……ありがとうございます……」 紺色のビニール袋に入れたらお渡しだ。 随分と小さい声で例を言う小柄なお嬢さん(地元の中学校の制服だった)に、にこりと笑顔を向けて頭を下げた。 そしてその後ろに並んでいたお客さんに体ごと向ける。 「お待ちのお客様、レジこちらでございます、大変お待たせいたしました」 いやあ、今日は行列日和だな! バイトの俺には荷が重いぜ!
/10ページ

最初のコメントを投稿しよう!