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「最初は親切な人だと思ったんだ。でも今は、守ってやるかわりに売り上げの七パーセントよこせって言われてるらしい」
晶一がすっと目を細めた。見る者がぞっとするような酷薄な横顔を見せる。恐い目をして、口元だけはかわらず笑っている。
「あー七パーはわりと良心的ね。でも弱み握られりゃ、すぐ引き上げられるよ。今はどこも排除条例に暴対法の改正で儲からないうえに上納金しぼられてカッツカッツだから。ちょっとネットで目立ったから、目エつけられちゃったね。だからって、カタギにちょっかいかけるのは俺は好かねえやり口だけどな」
腕を組み、天井をにらんだ。
「あれなー。俺んとことは違う組だからさ。俺が舎弟つれて表から出張る(でばる)わけにいかねーんだよ。悪くすると抗争になるんだよね」
わかる? と俺のほうをちらりと見た。
「『花みずき』を血塗れにしたくないだろ?」
「お、お前が一番そうしたくないんだろ」
そういうと、晶一の目は一瞬寂しげないろをみせた。
「そう。あそこだけは誰にも手エ出させねえよ」
なにか覚悟した顔でかすかにうなずいた。
取り壊し中のマンション跡地で、麒麟の刺青の入った遺体がみつかったのはそれから一週間とたたないうちだった。
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