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いらだちを隠さずそいつを見ると、いきなり、ぽん、とテレビ前のローテーブルに白い封筒が投げられた。一センチほどの厚みがある。
「秋則くん、ご結婚オメデトウゴザイマース」
イヤミっぽく言った。
ずくりと胸がうずく。
「なに、俺には知らせてくんないの? 結婚式の招待状も着いてないんだけど? 水くさいなー」
「呼びたくても呼べないんだよっ。お前だってわかってんだろ!」
俺が激高すると、今度は急にしゅんとして黙る。
こいつのこういう読めないところが苦手なのだ。
「相手家族に紹介できないから? なんだったら、会社二、三個転がしてる実業家です、とか紹介してくれてもいいんだよー」
「法人の権利転売してるだけだろ?」
「借金まみれで、自宅の土地まで二重三重の抵当入れて氷付けになってる人なんて、もうね、名義くらいしか金にするものないのよ。ある意味、人助けなんだけどね」
何を言ってもこたえない。人をくったような態度だ。
ずっと言いたかった一言が思わず口をついて出た。
「‥‥なんで。なんで刺青(スミ)なんて入れちゃったんだよ。もうカタギに戻れないじゃねーか」
晶一は、すい、と背中を向けた。
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