紫煙の惑星

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 俺は今回、着任のあいさつも兼ねてニチンチコ星に向かっている途中であった。 「恐縮です」  新しいタバコに火をつけ、俺は軽く頭を下げる。ついでに相手のタバコにも火をつけてやる。  どうも、とニチンチコ人大使は微笑み、百以上ある通気孔の一つでタバコをくわえた。  ニチンチコ人は、縦笛人間と形容すべき姿であった。地球人と同じく高度な知能を有し、二足歩行という点は類似しているが、言語機能は著しく違った。  地球人の発声器官が口であるのに対し、ニチンチコ人は全身にある通気孔を使う。この部分を閉じたり開いたりすることによって音をだし、コミュニケーションをとる。  たとえるなら、縦笛の音で会話をするようなものであろう。ただし、その音階は何千とあり、地球人の耳では聞きわけることは不可能である。  俺が彼らの言語を理解できるのは、もっぱら耳につけている翻訳マシンのおかげだ。 「いや、お宅の会社はもっと誇るべきですよ。この美味をニチンチコに伝えてくれたのだから」 「美味、ですか」
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