紫煙の惑星

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「では、タバコを廃止する運動が起きたのでは?」 「いえいえ。今じゃタバコはニチンチコ人のステータスです。タバコを廃止することは不可能でしょう。そんなことをすれば、たちまち暴動が起きてしまいます」 「ということは、その重度タバコ依存者たちは野放し。しかも厳罰は与えていない?」 「まさか。政府も指をくわえて黙っているわけにはいきません。重度タバコ依存者専用地区を用意し、喫煙基準値を超えたニチンチコ人を強制連行しています。ただ、重度タバコ依存者とはいえ、同胞を殺すわけにもいかず、適度にタバコを与えている現状ですが」 「SSC社員の身としては、お聞きするだけで複雑な気持ちになる話です」  ずいぶん手ぬるい処置だ。こっちとしては、そのほうが商売はしやすいが。 「どこの星にも闇はありますよ。今じゃ無法地帯に変わりはて、タバコを送り届けるのも命がけです」 「あなたのおっしゃるとおりかもしれません。ところで、ニチンチコまであとどれぐらいで到着ですか?」  灰皿でタバコをもみ消しながら、俺は尋ねた。 「もう、二、三時間でしょうか。ほら、ここ。この星がニチンチコですよ」  3Dディスプレイを呼びだし、ニチンチコ人大使が指さした。
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