紫煙の惑星

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 暗黒の空間に白い煙がぽつんと浮いている。どうやらニチンチコ星はガス惑星らしい。 「おかしいですね。資料にガス惑星とは書いてなかったのに」  俺が首をかしげていると、ニチンチコ人大使はぶっと吹きだし、全身の通気孔から甲高い音を鳴らして大笑いした。 「いえいえ。あれはすべてタバコの煙です。お宅のタバコは全ニチンチコ人が毎日のように吸っている。今の若い世代なんて生まれたころから吸っているベビースモーカーですからね。ああいうふうになるのも必然でしょう」  これはゴーグルとガスマスク、あとは酸素カプセルが必要か。そう考えながら、俺は着陸準備をすべく喫煙エリアをあとにした。  案の定、ニチンチコ星は紫煙の惑星に成りはてていた。  大気圏突入には成功したものの、絶望的な状況が待っていた。着陸シークエンスに入った葉巻型宇宙貨物船のメインモニタに映しだされるのは、一面煙に覆われた世界。頼りにすべき飛行場灯台も進入灯も確認できない。  しかも制御装置が大気圏突入の衝撃で故障したらしく、こちらの操作を受けつけなくなっていた。 「おや。これは予想以上に大気汚染濃度が上がっていますよ」  操作パネルをタッチしまくる俺の横で、ニチンチコ人大使がのんきに話しかけてきた。
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