紫煙の惑星

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 そんなアホな理由で、このひどいながらも安定した会社での仕事を失うのは勘弁である。  ここまで説明すれば、俺が怒鳴りたくなるのもおわかりだろう。 「つまり、タバコもダメになる、と」  真剣な声が聞いてくる。 「あたりまえだ。全部燃えちまう。すさまじい損失だ」  ニチンチコ人大使は、この非常事態においてもタバコの心配をしている始末だ。こいつも重度タバコ依存者じゃないのか? 怒りもあきれもとおり越して、感心せざるを得ない。  船内に警告音が鳴り響く。猛スピードで降下する葉巻型宇宙貨物船の先に、物体があることを知らせているのだ。もちろんメインモニタは白いまま。しかし墜落しているのは間違いない。  直後、地鳴りのような音がとどろき、すさまじい揺れが俺たちを襲った。火花が散り、電源が落ち、照明が消える。予備電源が作動し、赤い誘導灯の明かりが船内に広がる。  警告音が鳴りやまない中、俺は手もとのゴーグルとガスマスクをつけた。どうやら生きているらしい。あたりを見まわす。  ニチンチコ人大使が不協和音を鳴らし、腕と足をありえない角度に曲げて倒れていた。 「タバコは……。タバコは無事ですか?」
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