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櫻井が躊躇していると、目の前の頭部達が櫻井に密着しそうな程に近づいて来た。 頭部達は苦悶の表情を浮かべていた。 櫻井から滲み出る蒼白い炎が、近付き過ぎた頭部を焼いていたのである。 霊体が櫻井の炎で燃えてしまう事は、その霊体の消滅を意味していた。 「バカ野郎!近付き過ぎだ!お前ら、消えてしまうぞ!」 櫻井が怒鳴ると「私たちは自分の意思では動けません」と目の前の女の頭部が喘ぎながら言った。 「……おじちゃん。僕は燃えて消えちゃうのかな?」 先程の男児の消え入りそうな声が聞こえた。 男児の声に視線を向けた。男児の頭部が櫻井の炎で包まれていた。 櫻井は自分から出る蒼白い炎を完全に止めると、男児の頭部を抱き抱えて、男児の炎を吸収するようにして消火した。 櫻井の霊体も、櫻井から生じる蒼白い炎も、元来は同じものである。炎は櫻井の霊体から溢れたエネルギーが具現化したものである為に、櫻井は炎の調整ばかりか吸収して消火する術も、今ではマスターしていた。 「おじちゃん。ありがとう!」 嬉しそうに微笑む男児の顔が、突然、苦悶の表情に変わり霧散して消えてしまった。 同時に櫻井の胸に激痛が走った。
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