近況

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そんな事を考えている間にどうやらオイラは温泉宿、もといオイラの家まで彼女に引きずられていたらしい。それにしても子供とはいえ5キロ近くはあるあの距離を引きずる彼女の腕力は凄い。 「ふぅ、時間がかかりすぎね。たった三日でも体は鈍るわねぇ」  三日前はどんな化け物だったのだろう?まぁ、聞いても教えてはくれないのだろうけど……。そして、話を戻すが、彼女の最大の問題が今まさに目の前に迫っている風呂の問題だ。今までの件が示す通り、彼女には一般常識や主に家庭的な面でのマナーが欠けているのだ。 「外で遊んだなら、体くらい流してきなさい」  そういって脱衣所に放り込まれるオイラ。この扱いに至っては性別以前に猫か何かといった愛玩動物に対する扱いだ。脱衣所は一般家庭を改築した物とは思えないほどに広い。本々が土地の有り余った町であった事に加え、シルヴァのこだわりによって作られた家は一人で住むには寂しすぎるほどに広い。オイラの心を投影しているかの様に冷気が立ち込めていたそこを紛らわしてくれるという意味ではグリーンの無遠慮な行動や、温泉の活気は有難くもあった。渋々と服を脱いだオイラは衣服の泥を見て呟く。 「ナルホド、確かに風呂は必要だ」 もっとも、服に泥が付いた主な原因は彼女の行為なのだが、そこは考えまい。それより早く風呂に入って着替えなくては…… 「パウロ。汚れは落ちた?」 ……あぁ……遅かった様だ。オイラが身体を洗い始めたところにガラリと戸を開ける音。金色の長い髪を一纏めにしたグリーンが顔を覗かせた。
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