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「君は……確かティーチさんと一緒にいた少年だね?」
思わず不快感が顔に出る。この町ではあまり見かけることのないジーンズと呼ばれる生地のズボンと見慣れない前にボタンのない服で歩く少年は歳も変わらないであろうオイラに対して偉ぶった言葉で話しかけてくる。対して横の黒いコートの男はというと……
「よっ!久しぶり!」
あまりにも馴れ馴れしい。確か……彼らは三日前に町を攻めてきた帝国の兵士だったはずだ。特にこの少年はティーチを仇として宣戦布告までしたはず。つまり敵だ。……そしてふっと思う。仇というならオイラも似たようなものかもしれない。しかし、今はそんな事を考えている場合ではない。逃げるなら今か?自慢じゃないが、オイラは町の子供相手に足の速さで負けたことは無い。グリーンに教わった歴史の適正魔法で追い風を纏えば大人にも負けない自信がある。
「あぁ、すまない。私の名前はアキラ。こちらは魔法の権威でピートと言う」
名乗りが遅れた事に気付いたのかいまさら自己紹介をする少年。敵意はないのだろうか?
「いやーこいつはまだティーチ君の事を怨んでるみたいだがね、私は個人的に旧暦魔法に興味があるんで、ティーチ君と酒でも飲みたいなぁと……」
ピートはオイラの警戒を理解してか、そう言った。まぁ、オイラが警戒してもどうにもならないし、こいつらのボスはティーチが倒した。何を企もうにも、ティーチは心が読めるんだから心配も要らないか?
「ティーチは酒は飲まないよ。木の実のパンでも持っていけば喜ぶんじゃないかな」
適当に返事を返しながら、それでもやはり目的が気になったオイラは彼らの詮索の目で見た。
「……ピートさんにも言われたし、隠すつもりもない。確かに私は彼を怨んでいる。でも、実力で敵わない相手に挑むほど愚かではないつもりだ。だからまずは、情報が欲しい。差し当たり彼は私の再戦を受けると言ったので、この町にしばらく滞在する事にした」
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