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「ブラウン隊長の最期、確かに……」
不要に金銀をあしらえた煌びやか作りの部屋。実用性を度外視した装飾過多な鎧に囲まれたその部屋にはいっそ居心地が悪くなりそうなほどに大きく、ふかふかしたソファーが置かれ、机には書類の山と手にするのも戸惑う様な金の受話器が置かれていた。その部屋の奥、アキラに背を向けた初老の男性は広い窓から外を見て言った。口では隊長の死に対する悔やみを出してはいるが、その心にはそんな悔やみなどかけらもないのだろう。証拠に男はすぐにこう切り出した。
「それで……、作戦の失敗は受理とするが、幾分説明を求めたい」
「現存した教育者について……ですか?」
初老の男の言葉を遮ったのはアキラの後ろに立っていたピートだった。
「うむ、君ならばわかるだろう?一件の権威でもある君ならば教育者狩りが旧暦の物と軽視できるもので無い事は……」
ピートは顔をしかめた。ピートはその権威と知性からこの国に招かれた時、一つの条件を出している。それは国に仕える者ではなく、国に滞在する者でありつづけるという不可侵条約。国で唯一の自由意志を持つ軍人である。そんな条件を出す事が示す通り、ピートという男は地位や名誉に関心が薄く、己の探究心のみを優先する男だった。
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