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娘の名前を呼び、それが守と何やら言い合う声に変わる。
「……」
さすがに、家の中で予期せぬ出来事が発生したのは呑み込めた。
自分の娘がベッドの上で吐血しているような、そんな穏やかでない想像が脳裏に浮かび、すみれは即座にキッチンを出ると二人がいるであろう娘の部屋に駆けだした。
階段を上り、右側奥の部屋。
入口が開いていて、中から夫の声が漏れ聞こえてきている。
「あなた、いったいどうしたの? 愛は大丈夫?」
部屋の外から、恐る恐る中を覗き込む。
まず最初に見えたのは、息子の大きな背中。その奥に及び腰になりながらベッドの横に立つ夫の姿も確認できる。
しかし、肝心の娘の姿は視認できない。
ちょうど息子の身体がベッドと重なり、その先にある光景を防いでいるのだ。
「ああ……すみれ、今すぐに救急車を呼んでくれ。愛が……」
「え?」
どうすれば良いのかわからない。
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