不思議なドア

10/26
前へ
/95ページ
次へ
 しかめっ面のおじさんはギザギザのサラダを指差し言い放つ。僕は味なんかどうでもよくなってきて、それを一気に口に放り込んだ。  肩にいる雲助は何食わぬ顔?でサラダからきゅうりを6本の足で取り出し、食べていた。  息苦しい食事は40分以上も経ったように思えた。お腹がギュウっとなった。ぞんざいな食事を終えてドアから外へ出ると……急に涙が出てきた。  ……こんなに悲惨な食事は両親を思い出す。 「災難だったなヨルダン」  雲助が話す。 「たまにこういったことが起きるんだ。この館はいいことだけじゃないのさ」  僕は涙を拭いて、早めに立ち直るために力強く歩きだした。 「これがトラウマっていうのかな……? さあ、行こう!」  僕は雲助に辛かった気持ちを跳ね退けて元気よく発声した。  こんなことでこの探検を終わらせたくなかった。物凄くいい事がある。そう……きっと。本当の探検はこれからだ。  三日後のハリーのショーはいったいどんなものなのだろう。僕はワクワクしているはずの心に、不思議とざわざわと不可解な感じの部分に気が付く。  館を奥へと行くのではなく、三日後のハリーのショーがあるので灰色のドアを開けずに、探検をすることにした。  今度は四・五段だけの階段の正面のドアを開ける。  そのドアは淀んでいる青だった。中には複数の人が住んでいた。いつも緊張していてとにかく真面目そうな人たちだった。 「あなたは?」  真面目そうな人たちの一人が声を掛けてきた。 「僕はヨルダン。あなたたちはどなたですか?」  僕は敬語や丁寧語には慣れっこだ。意地悪な両親に幾度も教えられている。  その部屋はけっこう広くになっていて、住人は3人もいる。質素で地味な家具が置いてある部屋だった。  手前の神経質そうな小柄の男性が、  「僕たちは学者なのさ。この館を研究している。例えば、この館には幾つ部屋があるのか、館から出られるのか、この館は何時頃建てられたのかなど、調べたり考えたり」 「それは僕も知りたいことです。今はどんなことが解っていますか。良かったら教えて下さい」  すると、部屋の奥にいる長身の男性が、 「この館は、約700年前に建てられたようだ。館の主はジェームズ・ハントという大地主の狂人で、それぞれ大き過ぎる館だったようで、それらをそれぞれ滅茶苦茶に改造した後にくっつけたようだ」 「ジェームズ・ハント?その人が造った館……」
/95ページ

最初のコメントを投稿しよう!

17人が本棚に入れています
本棚に追加