不思議なドア

17/26
前へ
/95ページ
次へ
 巨大なガラスは700年の歳月を感じさせるかのように、両脇の壁にはガラスが挟まっていた窪みがあって、その窪みには30cmくらいの隙間が空いてきている。しかし、まだ分厚いガラスのようで、窪みに挟まったガラスはその位置を20cmも維持していた。 「700年で30cm……後、何年で20cmだ?」  数学を知らない雲助が疑問に思う。 「約500年だ」  一人の男が天使の扉から入って来た。  布で出来た袋を二つ片手に持ったグッテンだ。 「ワッ」  雲助が僕の肩から後ろ髪に隠れる。……蜘蛛が驚くなんて初めて見た……。 「後、500年か……」  そう呟くと、コルジンは遠いところを見つめるような顔をし、しばらく魂が抜けたようにガラスを拭いていた。 「グッテン? どうしたんだ? いつも部屋から出ないのに」  しばらくして、元気を取り戻したコルジン。 「コルジンに弁当を持って来てやったのさ。ルージー夫妻に頼まれたんだ。それと、ヨルダンくんのもある」 「え、ルージーさんたちが……」  僕はあの陰気なおばさんと、しかめっ面のおじさんが、僕たちに弁当を作ってくれたことが……とても信じられなかった。  何やらグッテンとコルジンがお互い顔を見合せた。グッテンは布の袋を一つ渡してコルジンと話している。  すると、グッテンが頷き僕の方に顔を向け、 「ヨルダンくん。食用栽培園の部屋を見せてあげる」  そう言うとグッテンは天使の部屋から外へと出て、僕を手招きした。 「行っておいで、君がどこから来たにせよ。今はこの館で暮らさなきゃいけないんだろ」  コルジンが僕の肩を叩いた。  僕は栽培が何か解らなかったが……。 「そこで、唯一の食べ物……野菜を作るんだ」 「食べ物……野菜。でも、唯一ってハムがあったよ」 「それは、お金を出せば……ハリーから動物がいる部屋から買えるのさ」 「動物がいるの。この館に……?」  外へと出たグッテンが戻ってきた。 「そうだ。この館にも動物がいるんだ。前に言ったジェームズ・ハントは古文書にあるロビンソン・クルーソーだったのさ。動物や草木などの植物を館に持って来たんだ。けど、ロビンソン・クルーソーと違うところは、近くの家から子供を幾人も連れ込んだことだ。その子供たちが今のこの館の住民たちの先祖なのさ」
/95ページ

最初のコメントを投稿しよう!

17人が本棚に入れています
本棚に追加