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巨大なガラスは700年の歳月を感じさせるかのように、両脇の壁にはガラスが挟まっていた窪みがあって、その窪みには30cmくらいの隙間が空いてきている。しかし、まだ分厚いガラスのようで、窪みに挟まったガラスはその位置を20cmも維持していた。
「700年で30cm……後、何年で20cmだ?」
数学を知らない雲助が疑問に思う。
「約500年だ」
一人の男が天使の扉から入って来た。
布で出来た袋を二つ片手に持ったグッテンだ。
「ワッ」
雲助が僕の肩から後ろ髪に隠れる。……蜘蛛が驚くなんて初めて見た……。
「後、500年か……」
そう呟くと、コルジンは遠いところを見つめるような顔をし、しばらく魂が抜けたようにガラスを拭いていた。
「グッテン? どうしたんだ? いつも部屋から出ないのに」
しばらくして、元気を取り戻したコルジン。
「コルジンに弁当を持って来てやったのさ。ルージー夫妻に頼まれたんだ。それと、ヨルダンくんのもある」
「え、ルージーさんたちが……」
僕はあの陰気なおばさんと、しかめっ面のおじさんが、僕たちに弁当を作ってくれたことが……とても信じられなかった。
何やらグッテンとコルジンがお互い顔を見合せた。グッテンは布の袋を一つ渡してコルジンと話している。
すると、グッテンが頷き僕の方に顔を向け、
「ヨルダンくん。食用栽培園の部屋を見せてあげる」
そう言うとグッテンは天使の部屋から外へと出て、僕を手招きした。
「行っておいで、君がどこから来たにせよ。今はこの館で暮らさなきゃいけないんだろ」
コルジンが僕の肩を叩いた。
僕は栽培が何か解らなかったが……。
「そこで、唯一の食べ物……野菜を作るんだ」
「食べ物……野菜。でも、唯一ってハムがあったよ」
「それは、お金を出せば……ハリーから動物がいる部屋から買えるのさ」
「動物がいるの。この館に……?」
外へと出たグッテンが戻ってきた。
「そうだ。この館にも動物がいるんだ。前に言ったジェームズ・ハントは古文書にあるロビンソン・クルーソーだったのさ。動物や草木などの植物を館に持って来たんだ。けど、ロビンソン・クルーソーと違うところは、近くの家から子供を幾人も連れ込んだことだ。その子供たちが今のこの館の住民たちの先祖なのさ」
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