不思議なドア

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 白と黒。対概念でもあって、混ざり合う。それは白、それとも黒。白い雪の黒い点。雪が降り積もれば黒い点はなくなり、雪が止めば黒い点だけ残る。  おじいちゃんが死んだ。意地悪な両親の話だと心臓がもともと悪かったのだそうだ。  優しかったおじいちゃん。僕のおじいちゃん。  僕は走った。降りしきる雨の中。何故、生物は死ぬのだろう。近所にいたヒロユキおじさんやペットのタローも、生き物だから……?  僕も死ぬの?  走って、走って、息が苦しくなっても走った。   僕の白のローブの寝巻きが……湿り出す。  気が付くと、いつの間にかおじいちゃんの大きな館に着いていた。  それは、白い色と黒い色の2階建て。白と黒が縦横に、館を自分のスペースをちゃんとわきまえているかのような模様だ。  いつの間にか、雨の止んだ東の方からの朝日がその白さをより一層、白くする。透明なコップに入れた、山羊の乳みたいだ。  黒い色の方は、つやつやの廊下のように黒い色が光っている。  玄関の扉を開けると、鍵がかかってないことと、両脇にある雫が滴る植木鉢の片方に大きな蜘蛛がいたことが解る。  僕は中に入ると、蜘蛛が話しかけてきた。 「坊主。中の中には、入るなよ」 「え?」  僕はしゃべる蜘蛛に振り向いた。 「その中さ。その中の中には入っちゃいけない」 「ここの人に怒られるから?」  僕は蜘蛛を見つめると、 「大丈夫さ。おじいちゃんの館さ」  泣き顔が自然と普通になる。 「そうじゃない。中の中には……」 「入るなだろう。でも、いいんだ」  僕は強引に中に入った。  蜘蛛が僕の肩に乗っかった。 「人間の子。名前は?」 「ヨルダン」 「いくつだ」 「11歳」  そんな話をしながら、色とりどりの家具が置いてある広間へと足を運んで行った。ここには誰もいない。誰も住んでいない。住んでいたのはおじいちゃんだけ。  僕の散らかり放題の部屋の数倍の広間は、赤や黄色の豪華な家具が壁に所狭しとある。中央には大きな階段があり、その階段を上ると正面と両脇に部屋がいくつかある。その豪勢な部屋の大きさも僕の部屋の大体3個分はあるようだ。とても大きい。  この広い広間を見渡すと、どうしても遠い昔のことを思い出す。
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