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レタスを抱えたグッテンは、
「金がないからな……。薄いピンクの部屋も案内してやりたいが。しょうがないか。また今度、コルジンに案内してもらえばいい」
僕はがっかりした。
しかしすぐに、はっとした。
「そうだ。僕は今、60クレジットあるよ」
グッテンはレタスの土を叩いて一枚剥き、口に放り込むと、
「それはいい。私も薄いピンクのドアを開けるのは初めてだ」
僕とレタスをシャキシャキと食べるグッテンの二人は、隣の薄いピンクのドアに向かう。
薄いピンクのドアはカギが掛っているみたいに立て付けが悪かった。
二人で力を合わせると、ギイイ、と音を立てて何とか開いた。
「うわ」
僕は開けた途端、むっとくる獣臭さに顔をしかめる。
「こんにちは」
ドアを開けたグッテンは、獣臭さに顔をしかめて正面にある台に向かって言った。
「やあ。こんにちは」
太陽があれば焦げ茶色が似合う色白の中年の男性だ。鬚面でライオンのような髪の毛で……まるで、子猫のように小さい僕を威圧しているようだ。でも、怖い気持ちなんてこれっぽっちもないけど!
「グッテン。お前がここに来るとは珍しいな。とうとう肉が食いたくなったのか?」
「違うよ……。私は肉が嫌いだ。このヨルダン君を館見学に連れているのさ。こちら食用動物園の管理人のマルコイさんだ。後一人、ホルサは?」
「こんにちは」
「ホルサは昼飯。おい、金はあるのか? ここに入ったら必ず金で肉を買う決まりだ」
食用動物園。ここの大きさは小学校のグラウンドのやはり三倍の大きさ。床を全て引っぺがした大部屋で、幾つもの古ぼけた鉄製の檻に動物たちが土に足を付けている。動物といっても、豚や牛がメインだった。
僕の知っている鹿や魚は、この館では食べられないのだろう。
マルコイの乗っかっているレジのようなところの脇には、大きめの冷蔵庫が6つもある。冷蔵庫はそれぞれ地面から天井まで伸びていて、天井の方には見た事もない複雑な機械が取り付けてあった。冷蔵庫の中身は細かく区分けされたガラスに小さくカットされた肉が入っている。
機械の正面に{メイド・イン・トーマス}と書かれてある。
鳥肉もあるようで、かなり奥に鶏が数羽いるようだ。
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