不思議なドア

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 僕たちが振り向くと、丁度、天使の扉付近にいる。あの恐ろしく細い女がこちらに歩いて来た。 「ヨルダン様は途中までですが、お仕事をなさいました。私の上司のハリー様からそれでも、給料を全額支払ってくれとのことです」  僕はこの広い部屋と同じくらいに急に心が広くなった。もうすっきり爽快だ。明日、ハリーに会ったらお礼を言おう。それと、僕にお金を物怖じしないで貸してくれようとしたコルジンにもお礼をしなくちゃ。 「コルジン! お姉さん! 本当にありがとう! 僕こんなに嬉しい時は今までなかった!」  コルジンがよかったなと笑顔を向けて、洗剤の匂いをぷんぷんした手で僕の頭を軽く叩いた。  乾いた音が辺りに響いた。  思えば、この館に来て最初に出会ったのはコルジンだった。すぐに僕を泊めてくれて、食事も食べさせてくれた。僕がどこから来たのかも全然気にしてなくて……。グッテンも館を……僕が外館人で変わり者なのに……気にせずに案内してくれた。  初めて僕はこの館で友達を得た。 「お礼は結構です」  細い女が抑揚のない声で言った。  僕はコルジンとグッテンに出会えた喜びをそのまま顔に出していた。  ハリーも、もう友達になったのかも知れない。 「よかったなヨルダンくん。この館の人は君を受け入れてくれたようだ。勿論、私もだよ。外館人よ」  グッテンは爽やかな表情で僕の頭を、レタスを持ちながら軽く叩いた。 「ねえ、お姉さん。明日のハリーのショーは何時頃なの。僕は絶対に行かなきゃならないんだ。ハリーさんと約束したし……。コルジンと一緒に行くよ。あ、グッテンは?」 「私も行こうかな……」  グッテンは急に不穏な顔をしてそっぽを向いた。震える手で、片手サイズになったレタスを強く握り潰した。 「一緒に行こうなおチビちゃん。楽しもうぜ」  細い女がポケットから小さい紙切れを取り出すと、読み上げた。 「確認します。……明日の午後13時から20時までです」 「昼飯を食い終わってからだな。仕事は午前中だけやることになるな」  コルジンは遠い方を見る顔をした。 「図書館の案内は明日は無理だな。明後日にしようか。後、大浴場の案内もしてあげたいが……」  グッテンがやや真剣でトーンを下げた声色をしていたが、僕は胸いっぱいだったのでまったく気にしなかった。明日はハリーのショーだ。
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