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僕は今日、寝むれないだろう。こんな素晴らしい日があるなんて!
「中の中には入っちゃなんね!」
雲助が何やら叫んだが僕の耳は機能しなかった。
その日の仕事を僕は中途半端に終えて、コルジンの部屋へと着くと、明日のハリーのショーを期待し過ぎて眠れないかと思っていたが……ぐっすりと眠った。
「ハリーか。どんなショーか。楽しみだぜおチビちゃん」
「うん。僕も……」
片隅のベットに仕事に疲れて倒れた僕を、コルジンは床からニンマリして眺めていた。
翌朝、午前中の仕事をするために、やや遅れがちに僕は部屋を出た。コルジンは早起きして僕と雲助の朝食を作って一足先に仕事に行ったようだ。思えばコルジンの部屋にはあれからずっと泊まっている。何か恩返しを考えなくては?
片手に今朝コルジンが作った朝食のハムサンドバーガー。片手にキュウリの上に乗っかった雲助をキュウリごと持ち、館の迷路に挑む。
こんどこそは頭から湯気がでないように右へ左へ、途中、ドアの見ず知らずの住人に天使の扉の場所を聞いて、何とか辿り着いた。
「お、今日は早かったな。頭も湯気が出てないし」
コルジンの言葉に後ろにいる大人たちはまた笑いだした。
「おはようございます」
僕は自然と挨拶をするようになったみたい。広い部屋を突き進み片隅にあるバケツから一枚のボロ雑巾を取り出した。バケツの隣に洗剤入れの用器がある。
「がんばるね。坊子。昼飯に何か奢ってやろうか?」
大人の人の言葉に笑顔で答え、早速巨大なガラスを拭いた。洗剤はタップリ付けた。
コルジンの隣で大人たちに交じって、ガラスを拭く作業は僕にとってとても楽しい時間だった。
給料を30クレジットも貰えるし……。食料の野菜はタダだが有料の肉も自分で買える。寝床があるなら独り立ちも夢じゃないと思う。それにしても、コルジンのお礼はいっぱい働いて、お金を稼いで鳥肉を買おうかな。確か1200クレジットだったよね。きっと、とっても喜んでくれるさ。
巨大なガラスを黙々と拭き続けるこの仕事……。こんなことを毎日やるのはやっぱり辛いのかも知れない。けれど、みんなそれを先祖代々行っている。きっと、僕には理解出来ないが、外へ出たいという希望がそうさせているんだね。
それでも後500年もしないと外へ出られないなんて、なんて可愛そうな話なのだろう。
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