ハリー・ザ・ショー

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 僕ははしゃぎたい気持ちを抑える。まるで、僕は乗ったことが無いけど、同級生の感想にあった。ジェットコースターに乗るまでの並んでいる時の気分に似ているというのはどうだろう?と言っても当然、恐怖心を除いたワクワクした高揚する気分だけだけど。  しばらくすると、金色のドアへと一行は辿り着いた。途中の迷路はみんな気にしてないようで、僕だけがまた正確な道を覚えられなかった。でも、何となくだいたいの感でグッテンの部屋や天使の扉、そしてコルジンの部屋などには行けそうだった。  金色のドアは白い看板に「ハリー・ザ・ショー」と書かれている。  細い女性が分厚い両開き扉を開け放った。  大部屋はすでに人が疎らに集まっている。100人以上も入れるこの部屋に、すでに20人くらいの人が各々、千切りのキャベツが入っている小袋を持って、シャキシャキと食べている人や、ニンジンジュースをラッパ飲みしている人など、まだ何も始まっていないと言うのに賑やかになっていた。  ステージ上は20人は飛んだり跳ねたりできる広さになっていて、白の頑丈そうな木材で出来ていた。 「前の方に行こうや、おチビちゃん」  コルジンが前へと扇の頭のようになっている座席の列の前方を指差し、中央にある通路からみんなで前進した。 「娯楽。娯楽。娯楽。俺たち優先」  大人たちはウキウキしだし、全員何かの踊りのように肩を上げ下げしている。  細い女性は30クレジットをみんなから取ると、僕たちを前方へと案内した。  真っ暗な大部屋だがステージは例外として、足元だけ照明が仄かにある通路は両脇にもあった。どちらも人一人が一列に歩ける幅だ。  照明は天井に幾つもぶら下り、前方のステージを一斉に照らしている。そのステージには人を一人拘束するかのような、スパイ映画に出てくるベルトがたくさんある椅子が真ん中にポツンとあった。  前方へと広がる扇方の座席の一列に、僕が真ん中で右がコルジン、左側にはグッテンが座った。細い女性はどこかへと歩いて行った。  そして、大人たちはグッテンの隣にズラリと一列。  その大人たちの一番端に、一人の少女がキャベツ汁が入ったコップを片手に座っている。  僕はただ……見つめる。  その少女の目は本当に雲一つない蒼空のようなスカイブルーで、サラサラの髪は日光をたっぷりと浴びた麦畑のように小金色をしていて、僕と同じくらいの年格好だった。
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