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僕は心臓の音が耳いっぱいに聞こえるのをしばらくそのままにした。
「おいおい。心臓の音がうるさいぞ。それにしても、仕事というものをしている人間は特別なのか」
雲助が僕の頭から不機嫌そうに言った。
雲助の言う通り、仕事をしてお金を稼いだ人には優先されるところがあるようだ。誰も何も言わない。
僕は何も言なかったが、火照った体は、まるで全エネルギーを心臓へと送り込んだかのように、少しも動かないようだ。
「ハリー・ザ・ショー!」
しばらくボーっとしていると、いつの間にか100人もの席が満席になっていて、ステージの上には目玉を四方八方にして、金色のスーツを着こなしたハリーが、諸手を上げて叫んだ。ハリーのステージは一斉に全席満員での勢大な歓声を浴び尽す。
ステージには光輝く黄金の色を発した照明が、ハリーを一段と輝かし、黄金の色は鮮やかにハリーを歩く宝石へと変貌させた。まるで、ステージが全て煌びやかな金色の宝石で出来ているようだ。
「さあ、みなさん! 楽しいことに飢えているかい! 娯楽は至極極楽! 退屈で鬱屈なのは真っ平御免! キャベツジュースとフライドチキンの用意はいいかい? 仕事なんてしなくても今日は大して気にしないぜ! 消防活動をしてくれる住人たちも、火事をそっちのけで見に来てくれ! きっと、館は魔法が掛けられているから全焼はしないよ! それより、このショウを全勝してくれ!」
ハリーはマイクを通してコミカルに言い放つ。
「これから楽しいクイズを私が幾つも出して、それを頭を捻って答えてもらうよ! それには! 仲が良いなら誰とでも! 仲良く二人でペアを組んでもらう!」
ハリーは両手を広げ、
「そして、一人がこの拷問椅子に座り、もう一人は勇猛果敢にクイズに挑戦してもらうぜ! 10問全て正解なら……豪華100万クレジットと私の部屋からの館の奥へと2週間のご招待! あ、それから焦って制限時間以内に答えをださなきゃいけないぜ!」
ハリーはそう言うと、上機嫌にクルリと回り、
「だが、不正解が一つでもあったなら、その場で可哀そうな御連れさんは拷問椅子で世にも不幸なこの世の最後を垣間見てもらうことになる!だけれどだけれど、ペアは一つ間違えればクイズに挑戦する者を交替できるんだ!でも、そこで残念残念またクイズは10問になってしまう!勿論、勿論、何度も間違えると……」
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