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雲助が僕の寝巻きの腰の財布辺りを見て尋ねる。
「僕の世界のお金さ」
ハリーは少し考えて、
「俺のショーは有料だから……。仕方ない30クレジットやるよ。それがこの館のお金さ。そのお金を無駄遣いせずに必ず俺のショーを見に来てくれ。ところで、このおチビちゃんはどこから来たのかな?」
「解りました。必ず見に来ます。どんなショーなのか今からとても楽しみです」
ハリーは満面の笑顔で、
「この館には楽しみがないんだ。俺はそんなんじゃつまらないといつも思っている。そこで、このショーを思いついたんだ。このショーをやったら絶対楽しい……。この館の他にはない楽しみになってくれるさ」
僕は目をキラキラさせた。ふと、
「いつ頃始めるんですか?」
「だいたい三日後さ。楽しいことは早い方がいい」
そういえば、この館には時間があるのだろうか。
去り際に、
ハリーが明るい口調で、目を四方八方に向けて、
「一生心に残るショーさ」
「雲助。お腹が空いてきたよ」
僕はハリーのところから、数時間。階段の上り下りと散々歩きまわったせいでお腹が空いてきた。
「じゃあ。適当なドアの中の住人から食べ物を貰えばいいのさ」
雲助はお腹が空いているのかいないのか解らない口ぶりだ。
「うん。解った。おいしいきゅうりもあればいいよね」
僕は意気揚揚と隅っこにポツンとある灰色のドアを開けた。
「あら、いらっしゃい」
そこはピンクのエプロン姿の陰気なおばさんと、黒のズボンに白のセーターのしかめっ面のおじさんの部屋だった。
「何にする。何にする」
陰気なおばさんは怖い顔で、挑むように何度も僕に身を乗り出して尋ねた。しかめっ面のおじさんは、
「適当に作れ!」
そう一言、陰気なおばさんに言い放った。
僕はそれまでの意気揚揚な気分が、急に萎れて落ち込む気分になりだした。俯いて陰気なおばさんの進めたテーブルに座り、しかめっ面のおじさんの真っ正面になる。
「坊や。何か食べにきたのか」
ぶっきらぼうにそう言い放つと、
「さっさと、作れよ! 鬱陶しいんだよこの子!」
「そうね」
僕は落ち込む気持ちが心の底まできていた。まるで海に沈んだ古い船のよう。気分はどんよりとして、この場でどうしていいのか解らない。
「さっさと食え!」
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