4.命の選択

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翌日、信也は再検査を受けた。 今度はより精密な機械で、信也の腹部の腫瘍が細かく検査される。 数時間後、診断結果が出て、医師は真剣な眼差しで信也と母親を見る。 「……それで、信也は」 「検査の結果、畸形嚢腫であることが分かりました」 「畸形嚢腫!?」 「畸形嚢腫とは、双子の片方がもう一人の体内に取りこまれ、そのまま臓器や器官が バラバラの状態で成長したものです。  つまり、信也くんの腹の中にはもう一人の人間の臓器が入っているのです」 「ぞ、臓器ってどういうことですか!!?」 「本当は信也くんと、もう一人のその子が兄弟として生まれてくるはずでした。  しかし残念なことに、その子は生まれないまま、信也くんの体の中に取り残されている状態です」 「ど、どうなっちゃうんですか」 「信也くんが成長すれば、畸形嚢腫も成長します。  これは信也くん自身の生命が危ういものになります。  悲しいことですが、畸形嚢腫を摘出する以外方法がないのです」
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