1人が本棚に入れています
本棚に追加
それは、残酷な決断でもあった。
本当ならその子はこの世に生をもって、信也と一緒に暮らせたはずなのに。
畸形嚢腫であるがために、その子を殺すことになるのだ。
信也は、医師の言葉に強く反抗を抱いた。
「……俺は、医者を目指しています。
医者は一人でも多くの命を救うんじゃなかったのですか!?
本当ならこの子は生きてたんです、今だって生きてます!
それなのに、殺すなんて、嫌です!」
「信也ッ!」
母親が信也を怒鳴りつける。
医師は少し困りながらも、優しく信也に話しかける。
「信也くん、これは君自身の命が危ないんだ。
それに、畸形嚢腫は未完成な臓器でしかないんだ。
確実にこの世界で生きていけるのはどっちだと思う?
君が生きていくしかないんだ」
「でも、……この子が」
「この子だって、君には生きてほしいはずだよ。
この子の分まで、生きていかなければならないんだ」
「…………」
最初のコメントを投稿しよう!