奇跡と願い

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都内某所にて、事件が起こった。 コインロッカーベイビーならぬ、コインランドリーベイビー。 某日。独身の男性が自分の洗濯をしようと、コインランドリーの中を開けた。 まだほんのり温もりの残る乾燥機に。 生まれたばかりの赤子が、スヤスヤと眠っている。 男性は驚いて、警察を呼んだ。 警察はすぐに犯人である、赤子の親を探し出す。 案の定、赤子の親はすぐに見つかった。 まだ、学生であるだろう彼女。 恐怖に怯えながら、警察で事情を口にする。 内容はお粗末な話で、彼女自身も生まれるまで妊娠していたことに気付かなかった。 そういった行為は、たった一度と彼女は告げる。 避妊をしたかどうかは、よく覚えていない。 何故なら、彼女は泥酔させられていた。 けれど、相手に好意がないわけではなく。 だからこそトイレでの出産後、自宅を汚さないようタオルで何十にも赤子を包み。 コインランドリーの中にそっと、置いてきたとのこと。 勿論、選択の前に気付くだろう事を分かっていた。 運がよければ、誰かが愛情を込めて育ててくれるだろうから、と。 幼い母親の、愛情表現の一つなのかもしれない。 正解かどうかは、別にして。 警察官は事情が事情なだけに、丁寧に調書をとっていった。 彼女が怖がるといけないので、婦人警官のみの聴取。 それでも彼女はどこか落ち着かない様子で、個室を異様な程、怖がっている。 幼い彼女は、先ほどから落ち着きがない。 警察官は気になって、彼女に聞いてみた。 「何か、気になることでも?」 「あの。子どもは一人だけでしたか?」 警察官は怪訝な顔をして、情報に目を落とす。 「発見者は、一人しか見つけていないそうですが?」 途端に、幼い母親の顔が青くなる。
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