第1話

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どたどたと廊下を走る音が響く。 その音は段々大きくなり、今度はがらっとふすまを開ける音がした。 振り替えると予想通りの人物が立っていた。 「廊下を走るな、伊吹(イブキ)」 「緋華(ヒハナ)までじい様みたいなこと言わないでくれよな」 やれやれというような感じで、伊吹がため息を吐く。 ため息を吐きたいのは、俺の方なんだけどな。 「で、何の用だ?」 用事が有って走ってきたのだと思うが、すっかり忘れた様子の伊吹に微笑みながら問い掛けた。 「あっ! 隣村に狸のあやかしが出たらしいんだ」 「はぁ、またいつものお節介か? 本当に、仕方がないな、お前は」 呆れたような声を出してはみたものの、そのお節介に救われた身としては、おざなりにできないし、する気もなかったのであった。
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