5人が本棚に入れています
本棚に追加
どたどたと廊下を走る音が響く。
その音は段々大きくなり、今度はがらっとふすまを開ける音がした。
振り替えると予想通りの人物が立っていた。
「廊下を走るな、伊吹(イブキ)」
「緋華(ヒハナ)までじい様みたいなこと言わないでくれよな」
やれやれというような感じで、伊吹がため息を吐く。
ため息を吐きたいのは、俺の方なんだけどな。
「で、何の用だ?」
用事が有って走ってきたのだと思うが、すっかり忘れた様子の伊吹に微笑みながら問い掛けた。
「あっ! 隣村に狸のあやかしが出たらしいんだ」
「はぁ、またいつものお節介か? 本当に、仕方がないな、お前は」
呆れたような声を出してはみたものの、そのお節介に救われた身としては、おざなりにできないし、する気もなかったのであった。
最初のコメントを投稿しよう!