魔王、更なる変態と出会う

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ーなんだ?ー ヘルは完全に攻撃体勢を解き、そして瞬時に音もなく後方へ飛び退く。 ドドドドドドドドッ 鋼樹の尖った枝の様なものが急にヘルへと狙いを定め攻撃をしてきた。間を置くこともなく、その攻撃は四方八方からヘルを狙う。 だが、身体超過はそれすら軽々と躱せる程のスピードをヘルに与えていた。時折、魔術陣で爆破させながら躱すヘルに鋼樹の砂が降りかかり、ヘルは顔をしかめた。 ーこのままだと砂まみれだ。其れに、この砂が舞って鬱陶しい。鋼樹を破壊することなく、ランジェロの元へ行けたらよいんだけど、このスピードだと魔導蟲機の防御も間に合わないし、鋼樹の攻撃を防げるほどの防御力を上げる魔術には魔力が足りるかどうか……身体超過も防御力を劇的に上げるものじゃないから躱すしかないー 身体超過はあくまで身体機能の上昇を目的としている。筋肉はあくまで筋肉であるように強化したところで鉄のように固くなるわけではないのだ。 殴っても無事なのはヘルの攻撃力が相手の防御力を上回っているだけでヘル自身の防御力は通常の身体強化より少し劣る程度となっていた。 ー魔力も少ない、早く決めなければ……ー その時、ドクンとヘルの心臓が妙な動きをし、足がもつれる。其処へ鋼樹が迫るもヘルは寸前の所で避け、鋼樹の破壊された砂の上をザッという音を立てて止まる。が、鋼樹の攻撃はまだ止まらない。 すぐに動くヘルは胸の白衣の部分を握り、額に浮かぶ汗を誤魔化すように苦笑いを浮かべた。 ーこれだから身体超過は嫌なんだー
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