富田なのに青山と呼ばれる刑事

3/4
3人が本棚に入れています
本棚に追加
/4ページ
「モシモシ松山です。コンテナが到着しました。 ブツを押さえますから至急増員お願いします。 それから署長、例の顧客リストに載っている連中 の任意同行もお願いします。・・・ええ、富田が 入手したリストです。国会議員もいますから扱い はくれぐれも慎重にして下さい。」 県警に連絡を入れるとコンテナから積み荷が倉庫 に全部運ばれるのを待つ。 「どえらい量だな。おい富田、あのブツはどの国 から来たんだ?」 「ジャマイカです。世界最高級品ですよ。」 ジャマイカと言えば麻薬王ドドスで有名な国で、 彼の組織「シャワーパシ」は銃弾をシャワーの様 に浴びせるコトから付いた名前だ。そんな凶悪 組織と片眼野組が手を組んだのなら絶対に阻止を しなければならない。 「しかし、あれだけの量の粉(コナ)がよく税関 をパスしたな。」 刑事の間では麻薬を隠語で「粉」と呼んでいる。 税関ではX線検査もしているし麻薬犬もいる。 果たして連中はどうやって厳重なチェックをパス 出来たのだろう。 「ハハハ、粉で運ぶバカはいないですよ。」 富田が笑った。なるほど確かに彼の言う通りだ。 最近は密輸手口も巧妙で、オブジェやパスタに 加工して運ぶケースもある。積み荷をよく見ると 木の樽に詰めてあるようだ。 「木の樽に詰めて運んでいるのか。」 「ええ、それがジャマイカ産の特徴ですから。」 木の樽と言えばウイスキーだ。なるほど判った。 連中はウイスキーに麻薬を溶かして運ぶのだ。 確かにそれならX線でもバレないしウイスキーの 薫りで麻薬犬の鼻も誤魔化せる。流石は麻薬王、 上手い方法を考えるものだ。 「よし、そろそろ行くぞ。」 そう言うと松山は建物の陰から飛び出した。 その後を富田が慌てて追い掛ける。 「警察だ!全員その場を動くなっ!」
/4ページ

最初のコメントを投稿しよう!